ひざくりげ INDA INDO NESIA 5 ニュピとジャカルタ


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ひざくりげのパラレルストーリー

『南海嬉嬉回島伝(なんかいききかいとうでん)』
──昌福寺の花祭をめざして──
第五話 ニュピとジャカルタ

2017年(サカ暦(caka)1939年)3/28はニュピという、バリの特別な日。 静寂の日ともいわれるこの日は、スピ(sepi)=空いている、というのが語源らしく、とにかく 何もしないで家にいることが薦められ、基本的に外出禁止。火や電気を使ってはいけない。村や 地域によって、ルールの厳しさに多少の差があるようだが、概ねこのようにいわれている。昔は 36時間(ニュピ前日の夜18時~ニュピの次の日の朝6時まで)火を使ってはいけなかったそうだ。17861914_770960096394678_8087150079062035545_n

僕はニュピにバリにいるのが初めて。
前回インドネシアに長期滞在していた2004年、ニュピの日に僕はバリにおらず、その日は東ジャ ワにあるヒンドゥー教の聖地・ブロモ山(gunung Bromo)にいっていた。すると帰りにひどい高 熱が出る。バリに戻って数日うなされていると、いつの間にか身体中に発疹が。。。当時まだ日 本ではあまり知られていなかったデング熱も、高熱と発疹がでるらしいので、心配になって病院 に行くと、発疹チフスにかかっていた。日本でチフスって言ったら、まぁまぁ大変な感じに受け 取られるが、バリの人たちにとってはたいした病気ではないらしく 「チフスだったら、おかゆでも食べてれば治りますので。。。」 なんて言われて、抗生物質渡されて帰された。

今ではいい思い出だが、その時は死ぬかと思った。17799469_770959899728031_7837150340009743082_n
もしかして、外出禁止の日なのに、外(しかも島の外)に行ったからバチが当たった?みたいなことを考えて、もし次自分がインドネシアにいる時にニュピにあたったら、必ずバリにいよう、と思っていた。
ニュピの1週間ほど前に、村の自警団が家に来て「ニュピの心得」なるものを置いていく。
○火(電気も含む)は、怒りの心を表すため、使用を禁じます。
○精神を綺麗にするため、仕事や物理的活動を禁じます。
○外出を禁じ、自分の内面と向き合いましょう。
○エンターテインメントやレクリエーションなどはせず、高い精神を養うことを目指して過ごしましょう。
むむむ。怠惰な日本人にはものすごく厳しいきまり。。。とはいえ、これだけ厳しいことを書いてあっても、みんながみんなこれを守っているわけでもないようで、外出はしないにしても、夜の食事時はちょっとライトをつけていたり(実際ご近所に何件かあった)、家の中でカードゲームやったりしている。
ニュピの朝、起きぬけにまず感じるのは、その音。鳥や犬の鳴き声以外、まったく何も聞こえない。人の生活を感じる音~料理や庭履きの音、バイクや車の排気音、人が行き交う気配の一切合切がない。
いつもの町並み。音だけが全く失われた世界。
我が家はというと、上記に出ていた決まりの「外出」以外を全てぶっちぎって、この日のために 日本から取り寄せていた海外ドラマのDVDを、朝から晩まで見てやるぞ!と思っていた。しか し、周りの家が想像以上に静かだったので、びびって無音、字幕でこそこそ見ることにした。

このニュピという日、1日体験して思うのは、日本でもこういう日があったらいいのにな、とい うこと。日頃生活している場所で、普段しているような生活音や、人が歩いている気配のない道 を見るのは、特別な感慨がある。実際、火も電気もつかわないので(携帯やっている人はかなり いたと思うけど)、周りにウンウンと動くエネルギーが全くない。まさに静寂を味わえるのは貴 重である。さらに夜、街灯も、家々の明かりも全くついていないと、あんなにも星が綺麗だとは! そんな体験が、例えば東京のど真ん中で味わえたとしたら、それはそれは素晴らしいだろうと思っ た。17862620_770960309727990_632500714408170782_n

そんな感慨にふけっている暇もなく、ニュピ明けの朝、僕はインドネシアの首都ジャカルタにい た。インドネシアの大手新聞社「KOMPAS」が運営するギャラリーで影絵と音楽のパフォーマン スをするためである。昨年末に参加したジョグジャカルタの人形劇フェスティバルを見に来てい たkompasのプロデューサーが、僕のパフォーマンスを気に入ってくれて、呼ばれることになっ た。心を空っぽに!というニュピのありがたい教えが吹っ飛ぶほどの大都会・ジャカルタ。経済 成長著しいイケイケのインドネシアの首都である。大渋滞と排ガスで汚れた空気、しかしそれを ものともしない人々の陽気なエネルギーを感じる。会場のkompasも、昨年新しく高層ビルを建 てたらしく、久しぶりの大都会に興奮する。17834241_770960686394619_1963534726465714876_o

プロデューサーから、ワークショップとパフォーマンスを依頼されていた。ワークショップは平 日の午後にもかかわらず、かなりの人が集まる。体験コーナーをたくさんやろうかな、と思っ て、いろいろネタを考えてきたのに、影絵体験もそこそこに質問責めにあう。さすが、影絵の伝 統を持つ人たち、飛んでくる質問のレベルがかなり高くて、答えるのが難しかった。日本人にとっ て目新しい影絵も、彼らにとっては日常の一部である。

夜のパフォーマンスも大入り。在ジャカルタの友人や、日本の方達も来てくれた。公演は1時間程度で全編インドネシア語で行った。影絵と音楽をやりながら外国語でコメディーをやるのはとても難しいが、インドネシアのお客さんたちはみんな暖かくて、大いに盛り上がる。彼らは、何かを見に来る、というよりも、何かを楽しみにくる、というのが染み付いてる。根っからのお祭り民族なんだろうな。17523319_770960459727975_193371556263909574_n

当日いきなり聞いたのが、インドネシアのテレビ局が取材に来ていて、僕のドキュメンタリーの 放送がすでに決定していたこと。しかも1時間半枠。とてもありがたいことだが、なんの事前相談 もなく物事が進んで行っちゃうっていうのが、インドネシアンスタイルである。

つづく。

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