アルバム発売記念のフリーペーパーVOL,2です。
VOL1,2ともに裏面には滞空時間のライブ中、影絵で踊っている道化【クロンチョ】のインタビューが掲載されています。
書き下ろしの4コマ VOL,1は道化【クロンチョ】、VOL,2はシカの告白。
VOL,1に引き続き、滞空時間の記事をCDジャーナルやソトコトに書いて頂いている岡部徳枝さんのコラム。ニューアルバムのイメージや楽しみ方がかいてあります。
感動的です。
飲めや歌えや踊れや騒げ 世にも愉快な村祭り その2
岡部徳枝
都会の雑踏で聴くガムランが好きだ。リーダーの川村亘平斎にそう伝えると、彼は嬉しそうに頷いた。
東京の街に突如舞い降りた架空の南の島の楽団。ココがドコだかワカラナイ――それでも彼らはいつものように島のガムランを奏で始める。世にも愉快な祭りサウンドが都会に鳴り響く。すると、どこかの高層ビルがピキピキとひび割れ、中からむくむくと熱帯の植物が顔を出す。夜通し、演奏は続いた。そしてあくる朝、東京は大きな森に生まれ変わった。
『来日』を作るにあたり、川村亘平斎が思い描いたイメージ。その音がその空間を支配する不思議。熱帯の祭音が東京で鳴るおもしろさ。私もその感じを楽しんでみる。
ある日の渋谷。無表情な高層ビルの谷間に、無言で行き交う人の群れ。コツコツとアスファルトを鳴らす靴の音に「グエーグエー」と、イヤホンから流れ出る蛙の声が共鳴していく。森から吹いてくる湿気を帯びた風を想像し、目を細めると、「こっちへおいで」手招きするように、霧の彼方からスリン(笛)の音が近づいてくる。トロンポン(青銅打楽器)のポワワンとした丸い音が脳内をくるくる。時空が歪む、時間が緩む。気が遠くなる思いで目を見開き、クンダン(太鼓)のリズムに合わせて足を踏み出すと、さっきまで灰色に見えた街の景色に、色彩が灯っていく気がした。
ガムランは空間で鳴る音楽。温度や湿度、人の気配や森のざわめき――蛙が大合唱していても、大雨が降り雷が轟いても――そこにあるモノと共鳴して変化を楽しむ。滞空時間のメンバーは、2012年7月、ガムランの本場バリでライブを行い、その醍醐味を共有した。「とにかくバリに来ればすべてわかる」と、川村亘平斎に諭され同行した私もまたそこで【ガムランを浴びる】という初めての感覚を味わうことができた。帰国後の凱旋ライブには、明らかにバリの気配をまとった彼らがいた。バリで味わった【あの瞬間のあの感じ】が沁みこんでいた。それから1年、滞空時間の祭りは続いた。『来日』は、その集大成。各地を旅した楽団の巡業記録。
「キサクナマハラジャ」を聞く。ドンドンドン♪ドドンがドン♪ どこかの山奥。満月の光のもと、陽気な太鼓に合わせて大勢が輪になり踊る姿が見える。「アルセーヌルパンみたい」を聞く。ラーラーラーララララーラララ♪ ここは海賊の宴? 潮風を浴び杯を掲げ、デタラメに合唱する男たちの姿が浮かぶ。これは滞空時間が仕掛けた、ちょっとした音のおとぎ話。今日はいったいどんな世界を見せてくれるのかね。新たな旅へ、いざ。
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TAIKUH JIKANG 滞空時間 2NDアルバム 【RAINICHI/来日】 2013/10/23発売!!